漆黒の王女〈後編〉

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『少しでもあの貼り紙に反応する人が現れたら、まず僕ん家に連絡するようにって言ってあったから、その情報が来たわけなんだけど…
 …シーナ? 大丈夫かい?』

 私の相槌がまちまちなのを気にしてか、おじさまが心配そうに尋ねる。

 私は額に片手を置いて、肘を着きながら上半身を屈めた。

 激しい痛みは無いけれど、額の中で小さな生き物でも蠢いているんじゃないのか、ゴワゴワと波打つのが気になる。

 でもしばらくすると、それもサーッと引いていった。

「う…ん、大丈夫、座りながら聞いてるから。おじさま、それで?」

 私がそう言うと、おじさまはほっと息をついて、話を続けた。

『うん、だからね、近い内にそっちに訪ねてくるかもしれないよ。
 貼り紙を見ていた男か、あるいは、その男が言う知り合いか。
 まぁ分からないけどね。一応覚えておいておくれ』

「はい、わかりました。サザンにも話してみます」

『うん。
 あ、そうだ。シーナの体調が快復したらでいいんだけど、一度こっちにサザンと遊びにおいで。
 留守を任されているから気後れはあると思うけど、うちのかみさんとアルテがうるさくってね(笑)』

「あはは。はい、私もおばさまとアルテの顔見ておしゃべりがしたいな。
 ………うん?」

『ん? どうした?』

 風の仕業と思って気に留めなかったけど、玄関の方からドン、ドン、と鈍く響く音がさっきからする。

「おじさま、誰か来たかも」

『あ、もしかして僕からの荷物じゃない? そうだ、その事でも話があったんだった』

「おじさまのは朝の内に来て受け取ったよ」

『ふぅん? じゃあ誰だろうね。サザンが帰ってきた?』

「わからない。とりあえず見に行ってみるから、後でこっちから通信飛ばし直します」

『わかった。待ってるよ』

 おじさまとはそれで一旦通信を切って、私は玄関へ向かった。

 ドン…ドン…音はまだ続いている。





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