漆黒の王女〈後編〉

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 リビングに戻って、届けられた手紙とおじさまからの荷物を開けようと手を掛けたけど、サザンが帰ってきてからにしようと思い直した。

 手紙の差出人は親方だった。やけに分厚いから、おかみさんも一緒に書いたのかな。

 親方は出発する前に、今回は森の地図の製作をちゃんとした環境でする為でもあるので、もしかしたら雨季が終わっても帰ってこれないかもしれないと言っていた。

 それまでに…サザンのお姉さんも帰ってきたらいいのにな。

 さっきの集配人さんの話を聞いて、お姉さんに1年以上も逢ってなくて手紙も来ないまま、口では心配ないなんて言ってるけど、サザンはきっと寂しいはず。

 だからといって、私がどうにか出来る事でもなく…

 私がいる事でサザンの支えになっていれば、いや迷惑になってない事を祈るばかり。

 親方達が戻るまでと、お姉さんが帰るまでと、私が…記憶を取り戻すまでと。

 一体どれが一番にやって来るだろうか…

 …っ痛。

 やっぱりそう、ダメだ、無くした記憶の事を考えると必ず痛みが走る。だから最近は考えないようにしているのに。

 はあ、と息を吐くと共に時計を見た。もうお昼に近い。そんな長いこと物思いにふけっていたのかと、苦笑いを零した。

 そういえばサザンは、お昼ごはんどうするのかな。

 早く帰るようにするとは言ってたけど、ほんの2、3時間で戻るとも思えなかった。

 サザンの事だから、久しぶりの狩りで張り切るはずだもの(笑)

 自分自身はまだあまり食欲がなかったし、やはり病み上がりでフラフラするので、この後少し休みたい。

 簡単にサンドイッチでも作っておいて、サザンが帰ったら食べてもらおうと考えた。

 ダイニングテーブルで座りながら作業をしているところで、通信機が受信した。

『あーもしもし、サザン? そこにいる? ドーゾ』

 おじさまだった。





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