漆黒の王女〈後編〉
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少し風が強い中猟に出掛けたサザン、様子が何かヘン? と思いながらも、その背中を見送った。
おとなしくしてろと言われたけれど、朝ごはんの後片付けをしてから、親方の家の掃除に向かう。
鍵を挿している時に、後ろから集配人さんに声を掛けられた。
「あぁよかった、シーナさんここにいた。サザンの姿も見えないし、どうしようかと思って。
アストライアンさんからのお荷物と、あとお手紙届いてます。
どうしましょう、ここで受け取りますか? でも、お荷物が重いので…やっぱりお家での受け取りがいいかと思いますが」
そうだった、今日は集配の来る日だった。
いつもなら来るまで用事に出ないって決めているのに、今は雨季でサザンが家にいるのが当たり前になっていたから油断していた。
手紙はともかく、おじさまの荷物には現金が忍ばせてあるから、留守といって玄関先に置いていくわけにもいかない。
「あっごめんなさい、私もサザンも家を空けてしまって。
じゃあ…家に戻ります。何度も足を運ばせてごめんなさい」
「いえいえ」
まだまだ休めと神様が言ってるんだろう、今日の掃除は諦めて、私は集配人さんと一緒に家に戻った。
リビングまで運んで貰ったので、集配人さんにお茶とお茶菓子少しを差し上げた。
集配人さんは顔をほころばせて、ほんの少しだけくつろいでいった。
「ごちそうさまでした、シーナさん。
今まであまりお話しする機会がありませんでしたけど、やっぱりお優しい方なんですね。
またいつか、時間あったら話し相手になって下さい。
あ、こんなこと言ったらサザンにまた怒られるかな(笑)
いえね、あの子のお姉さんも、あなたみたいに気遣いが優しい人でね。
つい話が弾むと【ねえさんから離れろー!】ってね、ふふふ。もう何年も前の話ですけどね」
帰り際にそう言われて、何と返していいのか困っている間に、集配人さんは馬車で村を去っていった。
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