漆黒の王女〈後編〉

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 結局、ねえさんからの手紙は来ないまま…ねえさんの誕生日を迎えてしまった。

 本当なら、20歳になったねえさんを囲んで、僕とシーナでお祝いをする手筈だった。

 でも、そうする事が出来ず、更にそれを憂う暇もなかった。何故なら…

「───ウウウ…ッ、アアア───…ッ!!」

 その日、シーナの頭痛がまた酷くなったのだ。頭が割れんとばかりに、悲鳴を上げた。

「シーナ、シーナ! しっかり…っ」

 ベッドの中で暴れまわるシーナの身体に触れると、ありえないぐらい熱かった。おそらく、シーナが初めてここに来て熱を出した時よりも高熱だ。

 親方もおかみさんもいない、僕はすがる思いでおじさんに通信した。お願い、医者を今すぐここへ呼んで。

『大丈夫、すぐにルニアのお医者さんをそっちに行かせるから。
 ねぇサザン落ち着いて。
 サザンがそんなんじゃ、シーナがますます不安になるよ』

 僕ははっとした。いけない、僕がしっかりしなくては。

 通信を切り、シーナがいる部屋に戻ると、悲鳴は出さなくなったけど辛そうに呻くシーナ。

 額に当てたタオルは代えども代えどもすぐにぬるくなる、それでも僕は頻繁にタオルを代え続けた。水も飲ませた。



 外は酷い空模様で、強い雨が打ち付け、風もゴウゴウと唸っていたから、ルニアの医者が来たのはもう日が暮れかけた頃だった。

 医者は熱冷ましと痛み止めをシーナに施して、水分だけは切らさないようにと僕に言い残して、さっさとルニアに帰っていった。

 そんな僅かな時間だけ? と思ったけど、医者が帰ってからシーナはウソみたいに安らかに、すうすうと寝息を立てた。

 その様子に安心して、すっかり気が抜けた。

 気が抜けて…シーナの眠る傍らで意識が遠のいた。

 あぁ、シーナが起きたらすぐ食べれるように、スープを作ろうと思ったのに…いいや、ちょっとだけ寝よ…





 ちょっとだけのはずが、僕が次に目を覚ましたのは、夜がすっかり更けた時刻だった。





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