漆黒の王女〈後編〉

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 それからまた数日して、おじさんから宅配便が届いた。

 ダンボールにぎっちり、チラシと封筒と、宛名と差出人それぞれのシール、この仕事のやり方がおじさんの字で書かれた紙、それから…

「サザン、お手当てだって」

「えっ」

 興味津々に僕の与えられた仕事キットを眺めていたシーナが、箱の脇に入れられていた一通の封書を取り出して僕に見せた。

 中央に【お手当て】の文字。

 中身を見て更に驚いた、子供のおこづかいにしちゃ多過ぎる額じゃないのか。

 早速おじさんに通信を飛ばす。

「おじさん? 例の荷物届いたけど…一緒にお金が入ってたけど、どういうこと?」

『そりゃそうさ、タダでして貰うわけにゃいかんよ。お手当てはしっかりしないと。
 これから4日に一度の割合で送っていくから、次の分が来るまでの間に今届いたのを全て完成させて、そのまま集配人が来たら渡しておくれ。
 サザンがきちんとやるか僕は見れないけど、大丈夫っていう信頼においての、お手当て前払いだからね』

 おじさんは笑いながら、こちらが萎縮してしまう事をさらりと言った。ますます気が抜けない。

「おじさま。私も手伝っていい?」

 僕に聞かないシーナの魂胆は分かってる、僕に言えば断られるのは明らかって踏んでるんだ。

『んー。簡単な作業だから大変になりようがないと思うけど(笑)
 まぁもしサザンが大変そうにしてたら、そうしてあげて。
 でもねシーナ、サザンに頼んだからね、僕は』

 おじさんの言葉を聞いて、シーナは目を丸くした。さすが、おじさんもシーナの性格をよく分かってる。

 暗に諭されたのを知ったシーナは、ふっと笑って「はぁい」と言った。

 通信を切った後、早速作業に取り掛かる僕を見るシーナ、手伝いたくてウズウズしてるのがよく分かる(笑)

 でも敢えて見ないフリ、知らないフリ。ひどいかな?

「サザン、がんばってね。
 でも…どうしてもの時は、ちゃんと言ってね? 自分だけで解決しようなんて思わないでね。
 掃除に行ってきます」

 結局はシーナも僕の事は分かってて、最終的には見守る形で程よく手離してくれるんだ。

 シーナが出ていった後、僕はそっと溜め息をついた。

 正直、ダンボールに詰められた量を見て、どこが大変になりようがないって?? と思ってしまった(苦笑)

 だから、本当にどうしようもなくなったら、遠慮なくシーナに頼ろう…情けない決意をしてしまった。

 でもこれが意外と僕の支えになって、次の荷物が来るまでに作業を終わらすという流れを崩す事はなかった。





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