漆黒の王女〈後編〉

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 お昼ごはんを作り終えても、まだシーナは帰らなかった。

 僕はまた図鑑を手にしたけれど、やっぱり飽きたとテーブルの上に戻した。

 その時にふと思い立って、僕はアストラおじさんの所に通信を飛ばした。

『あらサザン、アンタも私と話したいの? (ニヤリ)』

 アルテが出て開口一番にそう言ったので、

「ちがうし。おじさんに代わってよ」

 少しぶっきらぼうに言い放つと、アルテはまー生意気! と声を上げて、『今ダイニングにみんないるから、そのまま話していいよ』と言った。

 通信機のデメリット…その場にいる全員に話が筒抜けってどうなんだろ…って実はずっと思ってる(苦笑)

 そうこうしてる内に、アルテの気配は遠ざかって『もしもしサザン、何か話かい?』とアストラおじさんの声が前に出た。

 「あー、あのね? おじさん…おじさんの仕事で僕が手伝える事って、無いかなぁ」

『へえっ?』

 僕の相談に、おじさんは間抜けな声を出した。

「ほら、今森が雨季でしょ…何にもする事ないんだよ。
 猟はできない、グライダーのそばへも行けやしない。
 親方達は出稼ぎに行っちゃって、その間の留守を頼まれたけど具体的な事は何も。そのくせシーナにはちゃっかり掃除頼んだりしてさぁ。
 とにかくヒマ、ヒマ、ヒマ!」

『ふぅん(笑)』

 僕の愚痴っぽい訴えを、おじさんは笑いながら聞いていた。

『いいけども。でもサザン、留守を頼まれてるんだろう? こっちに来れるのかいって話だよ。まさかシーナを置いて、なんて言わないよね?』

「うっ」

 おじさんが痛い所を突いた。そりゃそうだ、ここに来てまだひと月ふた月しか経ってないシーナに全てを任せようなんて、無責任にも程がある。

「あのぅ…できれば、こっちにいながら出来る事があればなぁ、なんて…」

 僕が情けなくボソボソと言うと、おじさんだけでなく、近くにいるであろうおばさんとアルテも笑い出した。

『うんうん。わかった。
 そしたらね、普段うちのかみさんにお願いしてる事、サザンにやって貰おうかな。
 プリントを折って封筒に入れて、それに宛名貼りして貰うの。いいかい?』

 おじさんの最後の問いに、『それがいいわ』とベスタおばさんが同調した。





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