漆黒の王女〈前編〉

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 ルニアの町は港の波止場に沿って商店が並び、その一画を少し離れると集合住宅が犇めくエリアになって、道も細いしとても入り組んでいた。

 若干迷子になりながら、私とサザンはアストラおじさまの家があると思われる建屋の前に着いた。

 五階建てで、おじさまの家は最上階だという。

「階段はどこかな」

 屋内に入ってすぐのちょっと広い所でサザンがキョロキョロと辺りを見回すと、すぐ傍にあった扉がチンという音と共に開いた。

「サザン!」

 その扉の中からサザンの名を呼ぶ声がして、サザンがそちらを振り向くと、そこから女の子が飛び出してきた。

「全く、ナニちんたら歩いてんのよ? 上から見えてたんだから。
 しょうがないから迎えにきてやったよ」

 亜麻色の髪を両サイドにおだんごに結ったその女の子は、サザンの前で腰に両手を添えて胸を張って、薄い黄色の瞳をぎらつかせた。

「わ、ちょ、アルテ、久しぶりの再会なのに、なんでそんなド迫力なの。
 あっベスタおばさん、こんにちは!」

 女の子の勢いをかわしながら、同じく扉から出てきたご婦人に挨拶をするサザン。

「サザンよく来たね。ここまでご苦労さま。迷わなかった?」

 ニコニコしながらご婦人が言う隣で、

「だからママ、迷ってたからチンタラ歩きだったんでしょーが」

 と、まだ凄みが衰えない女の子が溜め息をついた。

 サザンがそっと私に耳打ちする。

「アストラおじさんの奥さんのベスタさん。娘のアルテ」

 あぁやっぱり。

 アルテの瞳はおじさまのをしっかり受け継いでいる、おじさまにはこんな鋭さはなかった気がするけど(笑)

 なんて思っているそばから、その鋭いアルテの視線が私に刺さった。

「サザン? 誰よ? この女は」





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