漆黒の王女〈前編〉

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 例の場所は夕暮れの光に染められて、オレンジに輝いていた。

「ほうぅ、アレだね?」

 アストラおじさんは早速黒い機械に目を付けて、ひとり走っていってしまった。

 残る僕達が黒い機械の下へ辿り着く頃には、おじさんは簡単にこの物体を見定めたみたい、

「色々ひん曲がってるけれど、こりゃグライダーだね」

 と振り向きながら言った。

「グライダー…?」

「うん。風に乗って飛ぶように出来てるんだ。それこそ鳥みたいにね、とても軽いんだよ。
 おぅい、枝を切るからノコギリ頼む」

 おじさんの指令で助手の人達が荷物の中から伐採道具を取り出して、おじさんも一緒になって機械の周りの枝を切り出した。

 引っ掛かりの枝が全て無くなって、機体がグラッと下へずり落ちた。

「きゃっ」「うわっ」

 僕とシーナが同時に叫んだら、はははとおじさんは笑って、

「ほら、僕ひとりでもご覧の通り。でも、想像以上の軽さだね。よく飛ばされなかったもんだ。
 おぅい、錨を作るから手伝ってくれ。それから、テントを張るスペースも確保しなきゃね」

 機体を担ぎながら野原の広い所まで出てきて、助手の人達と一緒に作業をしだした。

 僕達も、テントを張れるようにその辺りの草むしりを手伝った。

 全てが終わる頃、陽の姿はもう無く、森の輪郭を僅かに照らしていた。

「さぁ、俺達はもう帰らないと。
 アストラ、後は任せていいんだな?
 俺達はもう、猟のついでにかみさんの弁当持って様子見に来るぐらいしか出来ないが」

「勿論。僕達はしばらくここにキャンプを張って、このグライダーを修理がてら調べさせて貰います。
 わぁ嬉しいな、おかみさんの手料理届けてくれるんですか? 益々張り切っちゃうね」

 親方とおじさんの会話を聞いて、えっおじさん達ここで野宿? と驚きながらも、僕達にはもう何も出来ないのは分かったから、おとなしく帰るしかなかった。

 グライダー…というその黒い機械は闇にすっかり溶け込んで、目を凝らさないと存在が分からなかった。

 シーナが着ていた深緑のローブといい、まるでわざと隠れるように出来ているみたいだ…

 そんな事を思いながら、用意したランタンを掲げて親方の後をついて森の中へ出発しようとしたら、

「あっそうだ」

 思い出したようにアストラおじさんが声をあげた。

「サザン、もうすぐ町で開港祭があるよ。
 シーナと一緒に遊びに来るといい。
 アルテもサザンに会えるのを楽しみに待ってるから」





《Continued to another point of view…》






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