漆黒の王女〈前編〉

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 村から港町への手紙は、回収人に渡した後は一日で届く。

 アストラおじさんは手紙を出してから二日後に、助手の人を二人連れだって村にやって来た。

「オーリィさん! 元気そうでなにより。手紙下すってありがとうございます。
 さぁ、早速その機械とやらの所へ連れてって下さい」

 未知の物体とのご対面にワクワクの様子のアストラおじさん。少し生え際が人より上のおでこに、黒渕の丸眼鏡の奥に薄い黄色の瞳が光る。全然変わってないや。

「やぁサザン、元気にしてたかい? しばらく見ない内に大きくなったね。
 おぉ、キミが例のおじょうさんか。黒が美しいね」

 僕の肩を寄せて、もう片手でシーナに握手を求めるアストラおじさん。

 シーナがその手を取って、

「シーナです。宜しくお願いします、おじさま」

 と折り目正しく挨拶をすると、

「えー? へへへ、おじさまだって」

 なんか変に照れておじさんは肩を竦めた。

「さあ、挨拶は済んだな? 早く行かにゃ、陽が暮れちまうぞ」

 親方の一声で僕達は黒い機械の所へ向かった。

 お昼過ぎに出たから、着く頃は夕方だ。念の為に帰りの夜道用にランタンを持ち出した。

 そういえばおじさんや助手さん達もやたら大荷物、少しでも持つのを手伝おうと申し出たけど、

「いや、いや。気にしなさんな。僕達はね、研究の為ならどんなに大きな荷物があろうとへこたれないのさ」

 なんて、歌でも歌うみたいに軽い足取りで歩く。

 そんなちょっぴり変でフワフワな感じのアストラおじさんだけど、とても研究熱心で誠意のある人、僕にとっては親方と同じに尊敬する大人だ。

 おじさんはシーナの黒髪黒い瞳について何にも言わなかった。

 後でそっと尋ねてみると、

「あぁ、サザンは同色人種は初めてかい? 意外とね、世の中には沢山いるんだよ。
 でも黒には、初めてお目にかかったなぁ。オーリィさんの手紙でだいたいは聞いてたけど、いやぁ、潤いのある黒はいいね。美しいね」

 アストラおじさんは嬉しそうにシーナの黒を賛辞した。

 自分の黒があまり好きではないらしいシーナに聞かせてやりたかったけど、シーナは親方と並んで大分前の方を進んでいた。

 あの親方に簡単についていける足腰が、シーナにはあるらしい。

 僕なんてすぐひぃひぃ言っちゃうのに。その力強さを少し分けてよ。





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