漆黒の王女〈前編〉
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「おい、ここ見ろや」
親方が僕とシーナを呼び寄せた。枝や幹を伝って僕達は親方の元へ急ぐ。
親方は二つの翼の合わせ目の下の、パイプが大きく三角に組まれた部分にいた。
底辺に二つのゴムグリップ、その間に太いロープがくくりつけられていて、先っぽが強い力で引きちぎられたようになっていた。
「やはり乗り物か…? ここを両手で掴んで…でも、動力が何もねぇ。どうやって動くんだか…
そうそう、このロープ、命綱じゃねぇかな。かみさんが言ってたが、シーナの着替えをした時に、ベルトにロープの切れ端が結ばれてたとさ。
それからほれ、ここに…」
親方がパイプの上の方を指差す、何か尖った物で削ったみたい、【Sheena】、またこの文字が刻まれていた。
「これはおまえさんの物で間違いないな。ないが…当の本人の記憶にはないときたもんだ…」
親方は考え込むように呻いた。
シーナは刻まれた署名を指でそっと撫でながら、
「私の物…私のせいで、恐がっちゃったね。ごめんね。早くどかせられたらいいんだけど…」
森に棲む生き物達にそっと謝罪をした。
「ねえ親方、これ、どうしよう?
全部は解決しなかったけど、シーナの持ち物だってハッキリしたんだし、どうにかして元に戻せないかなぁ」
持ち主がシーナって分かった途端、僕には愛着が沸いた。
この黒い機械を雨ざらしの状態から抜け出させて、折れ曲がってる所なんかも全部直してやれたらと思った。
でもその術を、僕達は持っていないし知らない。
親方も同じ事を感じたようで、うんうんと唸り続けた後にこう言った。
「何の知識もない俺達はもう、お手上げだな。
これが何なのか調べられる人間に任せにゃ…あいつを呼び寄せるか…」
「あいつ?」
シーナは首を傾げたが、僕にはわかった。
多分アストラおじさんの事だ。
…