漆黒の王女〈前編〉
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それから…二日続けてひどい雨が降ったので、オーリィさんとサザンは【黒い鳥みたいな機械】の所へはおろか、猟にすら行けなかった。
その間に私の身体はだいぶ回復して、普通に動けるようになった。
サザンと一緒に家の掃除や料理をしたり、クロエさんに教わりながら獣肉の加工をしたり、我ながら器用にこなす。
「シーナはなかなか器量よしじゃないか。ウチに息子がいたら嫁に貰いたいくらいだ」
クロエさんは笑いながら言った。
三日して、森に陽が射した。
オーリィさんがサザンを迎えに来て、猟へ出ようというところで、
「あの、オー…親方。私もついていっていいでしょうか」
私がそう申し出ると、オーリィさんもサザンも目を丸くした。
「どうしたの、シーナ」
サザンが心配そうに聞く。
「私が倒れてたそばにあったっていう機械を…見てみたい。
私に関係があるのかどうか…見たら何か思い出すかもしれない。
お願いです、連れていって下さい」
私の言葉にオーリィさんは少しの間考えたけれど、
「森は深いぞ、はぐれるなよ。
サザン、お前と俺とでシーナを挟んで進むぞ」
「ハイ親方」
同行を許された。
なるべく目立たぬようにとの事なので、私がはじめに纏っていたらしい深緑のローブを身につけた。
「おいサザン、ちょうど集配人が来たぞ。姉ちゃんへの手紙書いたんだろ」
「あっそうだった」
オーリィさんに言われてハッとしたサザン、もう外へ出た所だったので、まだ家の内側にいた私が、
「ああサザン、私が取りにいく。お姉さんの机の中に入れっぱなしだったよね」
と言った。
シーナごめんねぇ、とサザンが言うのを聞きながら部屋に入る、机の引き出しを開けて手紙を取り出した。
──dear Zaza
from Southern──
お姉さんの名前、ザザっていうんだ。
そんな事を思いながら、私は手紙を持って玄関へ戻っていった。
《Continued to another point of view…》
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→【漆黒の王女】中間雑談・3
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