夜間飛行

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 私は声を上げて笑った。

「もちろん。何を遠慮してるの? この子の生命いのちの音を聞いてあげて」

 私の笑い声に反応してか、主張するようにぐるんぐるんとおなかの皮一枚の下で這う。

「ちょっとシーナ、笑わないでよ、シーナなのか胎動なのか分かんないじゃない」

「ふふ、ごめんごめん。静かにするから…」

「……」

 サザンが膝を着いて耳を寄せると、私はサザンの肩の後ろに手を置いて、指だけでトントンと叩いた。

 この振動はサザンを介して、この子へ、そして私自身へも伝う。

「…うわあ。僕のほっぺ蹴ってるよ(笑)
 おうい。元気に生まれてこいよ。その時は僕は…いないけれど…パパとママが両手広げて待ってるからさ。
 …うわ、また蹴ってきた。余計なお世話だって言ってるみたい(笑)」

 目を閉じたままくつくつと笑って、サザンは頬をぐりぐりと押し付けた。と思ったら、急に私との距離を空ける。

「どうしたの?」

「ごめん、調子に乗った…シーナ大丈夫? 痛くなかった?」

「ふふ、大丈夫だよ。この子も喜んでる(笑)」

 ああ、今度こそ間違いなくエルさんに怒られちゃう、頭をがしがしと掻くサザン。最後におなかをさっとひと撫でして、うんと伸びをしながら立ち上がった。

「しかし激しかったな、もしかして男の子?」

「うーんどうだろう?
 生まれてみないと分からないけど、おかみさん達は女の子じゃないかって言ってる。
 私も…そんな気がしてる(笑)」

「えーほんと? だとしたら、相当なお転婆さんだなあ(笑)」





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