夜間飛行

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「だから、そんなの気にしないでってば。
 おかみさんも、ベスタおばさまも、イオも、最初は旦那さんじゃなかったって言ってたよ(笑)」

 私がそう言うと、サザンはようやく納得、というよりは観念して、私のおなかに手のひらの負荷を掛けた。

「…あれ、止まっちゃったかな」

「ほら、やっぱりパパ以外には触られたくないんだよ」

「そんな事ないって(笑)
 あっそうだ、いつも横になってる時が激しいから…
 ごめん一度座るね、よっこいしょ」

 チェアに深く腰を下ろしてハイバックに背中を委ねる。そこから少し体を横たえて、再びサザンの手を導いた。

「ただ一ヶ所触るんじゃなくて、全体を撫でてごらん。
 おーい。分かるかなあ。サザンおにいちゃんだよー」

 穏やかにおなかの子に語り掛ける私とは反対に、「ああ、エルさんが僕を許してくれますように」とかなんとか呟きながら、サザンは恐々と私のおなかをさする。

「…あっ?」

 とある一点でサザンが手を止めた。

「分かった?」

「うん。ぐるんっていうか…ぐねぐねって感じ(笑)
 すごいなあ…この中に…いるんだよね…」

 サザンがいとおしそうに私のおなかの内側を見つめながら、さっきよりしっかりと撫でた。

 と、また、サザンの手が止まる。

「えと、あのー、シーナ?」

「うん?」

「厚かましいのを承知の上で言うんだけど…」

 こちらを見ずに、おなかに視線を落としたまま、サザンはもごもごとこう言った。

「耳を…宛ててもいい…?」





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