夜間飛行

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 ザザが? そういえばザザは、城にいる頃もよく夜空を見上げていたっけ。

 ここから見える星と、私の村で見えていた星は違うのねって、少し寂しそうに言った彼女を今でもよく覚えている。

「僕がまだ母さんのお腹にいる時にね、父さんと母さんと姉さんとで旅行に出掛けた事があったんだって。
 それでね、泊まった所で星が沢山見えて、星に詳しい父さんが…」

 そこで言葉を止めたサザンは、親方の地図をまた広げて「ええと、海の方向は…」と暗闇の中で見ようとするので、私は足元に置いていたランタンをサザンの側へ掲げた。

「シーナありがと…えーとこっちか…そうそうそれで、父さんがね、水平線スレスレで見える珍しい星の並びがあるんだよって。
 …ああ、あった! シーナ、この位置でスコープを覗いてみて」

 サザンが両手で固定してくれたスコープのレンズに片目を宛てた。

 遥か彼方の黒い海の際に、とても小さいが十字の星の並び。

「サザン、あれ? 十字になっている…」

「そう。あれの名前を父さんが教えてくれてね」

「うん」

「姉さんが、赤ちゃんの名前それにしようって。男の子でも女の子でもその名前にしようって(笑)」

「えっ、もしかしてあの星の名前って」

 サザンは顔をクシャリと崩して言った。

「サザンクロス」





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