夜間飛行
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「エルさんはいつ帰るんだっけ?」
「来週。そしたらもうずっと、行商には出ないって」
「そっかぁ。僕が行く前に会えたらよかったんだけど。向こうの話とか色々、聞きたかったなぁ。
でもこれでやっと、エルさんが傍で支えてくれる生活が…始まるんだね」
「ふふ…そうだね。これまでもそんな、離ればなれっていう意識はなかったけれど(笑)」
イオのスープを啜って、ほうっと白い息を飛ばしながら、これまでの事をぼんやりと思い返した。
修繕した漆黒城に住み始めてから、この先の漆黒城の在り方をずっと模索していた。
亡くなったパパの後継として、城主として、私に何が出来るのかと。
世界を回る彼に付いて行った事も幾度かある、サザンより先に私は海を渡っていたのだ。
その際に、私の祖先の様に地を追われる人達を何人も見てきた。
彼らの助けになりたい。漆黒城が彼らの安寧の場とならないだろうか。
そんな私の思いを彼は汲んでくれた。
私と彼と、漆黒城の生き残りであるイオとじいやと、何度も何度も話し合って…
彼らを迎え入れる準備が全て出来た頃、彼と私は結婚した。それが1年前。
そしてその割りとすぐ後に、私に新しい命が宿ったのを知った。
…