夜間飛行

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 無事に着陸出来たそこは、湖を木々が囲ってはいるが遠くを遮る程ではなかった。

 湖から川が流れ、少し行くと滝となって高台から落ちていく。

 高台の下の湿地を縫うようにまた流れていって、その果ては暗闇で見えなかった。

 見上げれば突き抜けるような、満天の星々。

「わあ…こんな高い所に湖なんて珍しいね。昔は火山だった所かな」

 親方ってばこんな所まで足を運んだんだ、サザンは笑いながら、気球からハイバックの簡易チェアを二脚出してセッティングした。

 そして私を座らせると、また毛布の束を私の膝に積んだ。

「サザンてば(笑) こんなには必要ないって。言うほど寒くはないんだよ」

「ダメダメ。おなか冷やしたらよくないよ。
 ただでさえこんな夜遅くにシーナ連れ出しちゃって…僕、エルさんに怒られちゃうよ」

 腕組みして項垂うなだれるサザンに、あの人はそんな風には思わないから大丈夫よと、毛布の上からおなかをさすりながら私は言った。

 旅立つサザンとの時間を作るには今しかなかった。

 長かった悪阻が終わり、新しい命を迎える準備に取り掛かれる位に体調がよくなった私には、今しかなかったのだ。

「油断したらダメだからねシーナ。ちょっとでも調子よくなくなったら、すぐに城に戻るんだからね。いいね?」

「はいはい(笑)」

 あの人からもよく頼まれているんだろう、過剰に私の身体の心配をするサザンは、シーナは呑気過ぎ、と呆れ混じりに溜め息をついて、イオのスープをカップに注いでくれた。





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