夜間飛行

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「そんなら…こっちはどう? 僕もまだ通った事ないんだけど」

 最近親方が地図を完成させたところなんだよね、言いながらサザンが胸ポケットから出した地図を広げて私に見せる。

 「うんいいね、行こう」と私が言うと、サザンはガスの調節をしながら気球の舵を取った。

 グライダーの操縦と同じ位、上手になった…

 もうすぐ18になろうというサザンの背中を、私の背丈なんてとっくに越して大きくなったサザンの背中を、色んな思いを抱えながら私は見つめる。

 ねえザザ。

 サザンは、あの小っちゃかったサザンは、

 あの時の私達と同じ年頃になったよ。

 空の向こうへ上っていった彼の姉のザザに、私は更に祈りを捧げる。



 明日から海の向こうへ渡るサザンを、どうか見守っていてね。





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