12月24日の灯り
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「───」
タケトはあんぐりと口を開けた。
何故って、今自分が、もみの木よりもさらに上空にいるから。
土を踏みしめていない脚の裏が気持ち悪くて、心臓の裏っ側がゾクゾクと震えた。
「ふむ…
あそこから繋げてみるか…
えーと…ユキムシは…
ふんふん…
寒い○○地方にいると…
──そぅれっ!!」
黒須はメモ帳をパタンと閉じて内ポケットにしまい、それと交差に同じ所から細い枝のような物を取り出した。
それから掛け声と共に、もみの木の頂上に飾られている大きな星の電飾目掛けて、その枝を思い切り振った。
すると、星の周りをうっすら白い筋が丸く縁取って、円と星の間の空間が恐ろしく真っ黒な闇で潰れた。
「さぁて来るかな…
5…
4…
3…
2…
1…」
黒須のカウントダウンの間、耳がキィンと鳴るくらいの静けさが包んだ。
耳が痛ぇ、とタケトが思った瞬間、塗り潰された闇から、ボフンッと白い煙が出てきた。
いや、煙ではなかった。
お尻に綿毛を纏った小さな羽虫だった。
それはそれはとんでもない数で、クラッカーが鳴らされたみたいに、飾りの星から四方八方へ飛び散った。
それと同時に、17時を告げるメロディーが町の拡声器から流れて、それを合図にもみの木のイルミネーションが始まった。
タケトの足下から、地上から、わあぁと歓声が上がり、
【あれっ、雪?】
【いや違うでしょ、モールの演出かなんかでしょ】
【でも綺麗ねぇ、本当に雪が降ってるみたい】
そんなどよめきがある中で、
【サンタさん!
ありがとう!
ハルちゃんと一緒に雪みれたよ!
ハルちゃんが行ってしまう前でよかった…
あああ…】
あの子の声がどういうわけか聞こえた。
「あぁー…まぁ…いっかぁ…
この後、大雪になるはずなんだけどねぇ、ジンクスによれば。
うん、まぁ、喜んでくれたなら、いいや。ハッハッハッ」
黒須は複雑な顔で乾いた笑いをした。
…