12月24日の灯り

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「は…あ?」

「いやね、この【世界のジンクス集】によると…
 ユキムシっていうのがいて、それが雪を連れてくるらしいんだよね。
 僕こんな伝説知らないんだけど、キミは? これほんとかな?
 まぁでも、これに載っちゃってるしなぁ…」

 さっきまでと全く違う口調でブツブツ言う黒須。

 ユキムシなんて聞いた事ない、つーかコイツ、頭オカシイ??

 だけどもどうして、この喧騒のひどい中、黒須の声だけが透き通るように届くんだろう。

 なおもブツブツ続ける黒須は、ふと上を見上げて、

「──よし、決めた」

 ニヤリと笑ってから、右手を高く掲げて、



 ──ぱちん。



 軽快に指を鳴らした。

 …あ。

 俺、これ知ってる。

 突然沸き上がった気持ちと共に、タケトはまるで内蔵から掴まれたみたいに上へ浮く感覚を持った。





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