12月24日の灯り
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そんな諸々の思いを抱えて混乱している私の前に、母親は手に持っていた物をずいと差し出した。
反射的にそれを握ってしまったが、握ったまま身体が硬直してしまった。
「かあさんゲームなんて分からないから。適当に買っちゃったわよ」
耳を疑ったが、これは、ゲームソフトだ。
ひとりよがりにならないよう、皆で楽しめる──私が欲しがった物のひとつでも何でもない、が、私にと、この母が、買ってきてくれた──贈り物だったのだ。
「あ、え、でも、もう図鑑を…」
そうだ、私は既に贈り物を貰っている。
これは受け取っていい物? わるい物?
すると、母親はふっと柔らかな息をついて私に言った。
「まさかあんたが、りっちゃんに何かプレゼントするなんて思ってなかった。
りっちゃん、本当に喜んで…本命のアレにはほとんど目にもくれてないわ」
母親の視線の先には、今朝までは無かった〇〇マンのボールテント。確かに遊んだ形跡は見られなかった。
「お兄ちゃんがサンタなんて粋じゃない。ありがとう。これは、かあさんからの報酬よ。今回だけ、特別」
あんたの欲しい物かどうか分かんないで買ったから、それは勘弁して頂戴、粗方言い終えると、母親は品物から手を離して昼食作りの続きに取り掛かった。
「あり、がとう、おかあさん。
あの、あのさ、夜、おとうさんも帰って来たらさ、みんなでやろうよ、このゲーム」
いいけど、かあさんもおとうさんも分かんないから、純がちゃんと教えるのよ。こちらを振り向かなかったが、声は穏やかなままだった。
──これは、この奇跡は、契約書の効果だ。私は瞬時に悟った。
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