12月24日の灯り

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 ──私は今となって思うのだ、あの時の出逢いは【奇跡】でありながら【必然】であったと。





 もう、何十年も前の話だ。私がヒト桁の年頃を越えて、少々世の中を冷めた目で見るようになった時期の事。

 街に冷たい風が吹き、ショップウインドウにクリスマスの飾りが増えてきた頃、

(──ああ、今年のクリスマス、何をねだろうかな)

 グローブを引っ掛けたバットを担ぎながらそんな事を考えていた。

 クラスの友達と野球をする約束をしていたが、急用が出来たとかで半数ほどドタキャン、こんな人数で出来っこないと即解散となったのだ。

 クリスマスソングもそこはかとなく流れる商店街を抜けて、家に帰る途中にある小さな公園で立ち止まった。

(少し、ここで時間を潰していこうかな)

 口から白い息が昇って青い空に紛れていったさまを見届けた私には、そう思った理由が、真っ直ぐに家に帰らない理由があった。





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