12月24日の灯り

39/71ページ

前へ 次へ


 女の子が全てを吐き出す前から、先生は女の子の頭を自分の胸に抱き寄せて、うんうんと喉を潰しながら頷いていた。

 聞き分けの良すぎるこの子の、奥の気持ちに触れて、下唇を無意識に噛みしめる。

(つばさちゃん、お手紙いっぱい書いて。私もいっぱい書く)

(うん)

(時々会いに行っちゃう。お茶でもしよう)

(うん)

(それから、それから…)

(先生…もういいよ(笑))

 そこからぷっつり会話が途切れたのは、僕が孤児院のそばを離れたから。

 あの子の前に黒いサンタが現れる理由なんかどこにもない。そんなわがままくらいで、黒いサンタなんか来ないのだ。

 今僕に出来るのは、あの子の行く先には心の灯火が沢山溢れているという事を、本人に伝える術は全くないが予知することくらいだ。





39/71ページ
スキ