12月24日の灯り

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 その拍子に少しめまいがした、軽く酔ってしまったみたい。

 十数秒ほど目を閉じて眉間を指で摘まんだ。再び体を起こして彼の方を見…

 あ? いない? どこいった?

「おっとっと…すみませーん…トイレ行くんでぇ、後ろ通りますぅ…
 …あれぇーっ…?
 キミ。キミ、えーっと、そう! 黒須くん、黒須くんだ!」

 背中を叩かれ振り向くと、向こうにいたはずの彼が酔っ払いの顔でそこにいた。

 ああそうか、僕のすぐ斜め後ろがトイレだった。けど、突然の事に僕はすっかり動揺した。

「いやぁ、ずいぶんと久しぶりだ! 元気にしてたかい?
 それにしてもキミ、ちーっとも変わらないねぇ。
 最後に会ったのはいつだっけ? 俺が本社へ異動になった頃だから…20年…え、20年…
 …えぇ…? 20年も経って…キミはまだそんな若…そんな、ばかな…



 ……



 ……あ?
 …いな…い…
 …飲み過ぎたかな…」

 少し青白い顔をしながらフラフラとトイレの中へ消えていく彼…この隙に僕はとっとと店を出た。



 あぶないあぶない。背後を取られるなんて…僕もまだまだ修行が足りないや。

 それより…彼の心の灯火が、まだ、辛うじてだが揺らめいていて…僕は心底ほっとした。





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