12月24日の灯り

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 そして歯抜けの男は、きびすを返して入ってきた扉をまたくぐり、礼拝堂の真ん中を早足で突っ切った。

 ベンチの端には赤布の若者がまだ居て、両手を前に組み、それを額に押し当ててぼそぼそと祈りを捧げていた。

 お前さんにもひとかけらの幸せが訪れるといい、せめてこの聖なる夜だけでも。

 扉に手を掛けながら歯抜けの男は心の中でそう呟いて、さっきよりも凍てついた空気の中へ、迷うことなく溶けていった──





「彼にしゅのご慈悲と導きがあらんことを」

 司祭様は男が出ていった後を長いこと見つめて、やがてそう言って胸の前で十字を切った。

 そして、隅の赤布の若者を振り返って、

「あなたの祈りのおかげで彼は立ち直れました、感謝します」

 空になったカップをそっと持ち上げながら言った。





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