12月24日の灯り
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布団の中にいるかのように赤布を全身にくるめている彼の顔はよく見えない、鬱蒼と厚い前髪が伸びているからだ。
唯一見える口元から白い息が上がる。少し頬が
そんな事はどうでもいい、スープを
「世の中はよぉ、本当身勝手なやつらばーっかりさぁ。
あんなやつらの願いを叶える義理なんざ、これっぽっちもないってぇのによ。
あいつらなんかの為に、この12月24日の聖なる夜に、何故俺は骨を折らないといけねぇ…!?」
礼拝堂の空間に男の声がぐわんと響く。
語尾に少しエコーがかかり、ステンドグラスから差し込む七色の光に吸い込まれた様だ。
司祭様はしばらく歯抜けの男を見つめ黙ったままだったが、やがて口を開いた。
「それでもあなたは、使命を果たす為奔走するのでしょう。
世界中の声をあなたは、無視する事ができないのでしょう。
それだからあなたは、ここへ辿り着く事を願ったのでしょう」
言い終わると司祭様は、開いていた聖書をパタンと閉じて、祭壇の横にある扉に向かって歩き出した。
「どうぞこちらへ。あなたが見たいものはこちらにありますよ」
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