12月24日の灯り

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「ったくよぉ、こんな辺鄙な場所にあるたぁ聞いてなかったんだがな。しかもまぁ、やたらこじんまりじゃないか」

 音の主──深緑の外套マントを羽織った髭無精で歯抜けの男は、荒々しい口調と同様にドサリと礼拝堂のベンチに腰を下ろした。

 そうここは、周りに何もない雪原にポツリ建てられた小さな教会。

 祭壇の上のステンドグラスが大きく素晴らしい以外の特徴はないように見えるが…

「どなたかから、ここの事をお聞きになったのですか?
 聞いた所で辿り着けるのはほんのひと握りなのですがね。
 あなたは運がよいのでしょう」

 司祭様は奥の部屋からスープの入ったカップを運んできて、男に手渡した。

「さあ、あなたにも。温まって下さいね」

 ここで男は、自分以外にも訪問者がいる事に気付く。

 隅の方で座っていた、鈍い赤色の布きれを頭から被った者が、司祭様からカップを受け取る。

 「ありがとう」と小さく聞こえ、若そうな男の声だった。





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