12月24日の灯り
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息子が4歳の時、彼は離婚した。
親権を元妻とし、息子が社会人となって独り立ちをするその時まで、養育費その他諸々のサポートを続ける条件を飲んでから、8年ほどが経とうとしている。
彼は時々息子とふたりで会うのを許されていて、最初こそは父親との時間を喜んでいたが、年々、徐々に、徐々に、息子の表情が冷たいものになっていくのが、彼には耐えられなかった。
(おれ、もう帰ってもいい? 友達と約束があるんだけど)
思春期に差し掛かろうという息子は、今度のクリスマスプレゼント何がいいか考えておいてくれ、と言う父親に見向きもせず帰っていった…それがつい先月の事。
結局息子からは何も連絡は無く、何でもいいから早く送って頂戴と元妻から催促があり、年頃の男子が喜びそうな物を配送した彼。
もうこうしてプレゼントを贈ったりしない方がいいんだろうか。会ったりしないで、養育費やお祝い金の援助だけにしたらいいんだろうか。それは果たして、父親と言えるのだろうか。
グルグルグルグル、思いが渦となって、今に灯火を巻き込んで消してしまいそうだった。
僕は思わず顔を背けた。灯火が消えるのを見るのはイヤだ。あれほど虚しいものはないのだ。
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