12月24日の灯り
29/71ページ
吹きすさぶ風の中、僕は市街地を離れ、住宅が犇めくエリアをふらつきだした。
会社帰りの、箱や袋を両手にぶら下げて早足で歩く男達と、何人もすれ違う。
彼ら全てに、心に柔らかい炎が灯っている…
ネックウォーマーの下で微笑を溢していたら、
(──ねえ、サンタなんて、本当はうそっぱちなんでしょ)
通り過ぎようとしていたある一軒からそんな言葉が聞こえた。
僕は地面を見つめたまま、立ち止まる。
僕には不思議な力があって、誰にも怪しまれず屋外から屋内の様子を見るぐらい、何て事はない。
(ギク…)なんて心の声を聞き取る事だって、何て事はない。
(は、あ? 何をいきなり)
心の声の主の母親が、質問の主の娘の顔を見ずに、手元の雑誌のページをめくりながら素っ気なく答える。
娘はTVの画面をぼんやり眺めながら話を続けた。
(だって、みんな言ってる。そんなのまだ信じてるのオマエだけだって)
…