12月24日の灯り

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 ──今年もこの季節がやってきた。



 人がざわめき浮き立つ、12月24日。

 この喧騒に身を任せ、ぶらりぶらりと街中をふらつく僕の事なんて、誰も気に留めやしない。



(…わっ、ナニあいつ、派手なネックウォーマー)



(しぃっ、聞こえちゃう)



 あらら。やっぱり目立つのかしら、コレ。

 身につけるのがしきたりだから、仕方ないんだよねぇ。

 裏地は闇を塗り潰したような黒、コレが表に現れたら…どうなっても知らないよ、クックックッ。



 その裏地を顎に擦り付けるように、ノルディック柄の真っ赤なネックウォーマーを鼻の上まで引っ張り上げて、着ていた深緑のコートを少し直しながら、僕はまた前を向いて歩き始めた。



 僕は、人の心に灯る12月24日の使命の炎を見守る為にやって来た、長い長い修行中の身の神様の使い。



 そういえば遠い昔、黒須と名乗っていた事があったので、しばらくは黒須ってことでよろしく。





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