12月24日の灯り
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彼はポンチョの裾から手のひらサイズの黒い手帳のようなものを取り出して、静かに読み上げた。
「フカミタケト。89歳。
幼い頃から小さな弟の為にサンタ業に勤しみ…
結婚し家庭を持ってからは、妻と子供達の為にサンタ業を続け…
子供達が巣立ってからも、今度は孫達の為にサンタ業をやめず…
病に倒れても、昨年の12月24日までプレゼントを贈り続けた、類い稀なサンタクロースの
「…………」
「使命を終えた者の元にはサンタクロースの神様がやって来て、願いを叶えてくれる…
その権利を今、おまえさんは持っているわけなんだがね…
──さあて、何を願うのかな…?」
「…………」
どこかで聞いたような話。
というか、その話が本当ならば、彼、サンタクロースの神様という事になるけれど…?
いつまでも黙っている俺に、彼は、ん? と首をかしげてみせた。
俺は、何を望む…?
考えるより先に、言葉が零れた。
「ああ…
俺を
むこうへつれていってくれないか」
…