12月24日の灯り
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──今夜は静か過ぎて耳鳴りがする。
いつもなら自分の弱々しい呼吸と心電計の冷たい機械音が、この病室に響き渡るというのに。
もう、ずいぶん生きたなあ。
友達や歳の離れた弟さえ、俺より先にいってしまった。
俺の命の灯は、あとどれだけある?
今日は、何月何日…?
「12月24日じゃよ」
そんな声と共に、鈴が鳴った気がした。
俺はもう目を開けても何も見えない、見舞いに来てくれる孫達の顔も見れない。
のだけど、どういうわけか、その声の主の姿を捕らえる事が出来たのだ。
派手な真っ赤なネックウォーマーで口まで覆っていて、
緑のネイティブ柄の刺繍がなされている、これまた真っ赤なポンチョを羽織って、
またまた真っ赤なナイトキャップを目深に被ったこの老いた男は、一体どこから沸いて出てきたのだろう。
彼は俺が寝ているベッドの縁に腰を下ろして、優しい眼差しを俺に向けた。
「ホーッホッホ。
ワシが見えるか?
ということは、おまえさんの使命は、
確かに終わったということじゃなあ。
よくもまあここまで。ホッホッホッ」
…