12月24日の灯り

21/71ページ

前へ 次へ


「おーいバイトくん。そろそろおしまいの時間だけど…
 おおお? もう最後の一箱かい? すごいなぁ、一人でよく頑張ったね」

 このクリスマスケーキを作ったお店の店長がタケトに声を掛ける。

「え? あ、いや、あの…」

 俺一人だった? 誰かいたような気がするけど。

「お疲れだったね。ここの片付けはうちでやるから、もうあがりなさい。
 あ、もし迷惑でなければ、そのケーキ持っていって? あとこれ、長靴のお菓子詰め合わせ。今日頑張ってくれたごほうび。
 いやぁーほんと、もっと残ってると思ったからねぇ、ありがたいよ…」

 店長の話をぼんやり聞いていると、頬に何かひんやりと感じた。

「おっ…降ってきたか。冷えると思ったら。天気予報じゃなにも言ってなかったけどな。
 ほら早くあがって。風邪ひくよ」

「あっはい、じゃあ…お疲れ様でした!」

 店長に深く頭を下げた後、タケトは空を見上げた。

 紙吹雪みたいに雪が舞い、それをイルミネーションが照りつけてキラキラと光っていた。



 【ユキムシが雪を連れてくる】



 急にこのフレーズが浮かんで、なんのこっちゃと首をかしげながら、サンタの衣装のまま上からダウンジャケットを着込んで、自転車に跨がった。

 ケーマを迎えに行かなきゃ。

 このカッコ見たら何て言うかな、喜ぶ? 呆れる? どうでもいいか、これが今日の仕事着だから。

 頂いたクリスマスケーキと長靴のお菓子の詰め合わせをカゴに大事に入れて、タケトは雪で濡れ始めた道を自転車で走った。



 彼の本来の目的を果たす為に。





(…メリークリスマス。ふふふ)










聖夜のひみつ Ⅱ〈完〉



[リアルタイム執筆期間]
2015年12月23日~24日

[改稿終了日]
2021年6月6日






※よければこちらもどうぞ
【聖夜のひみつ Ⅱ】あとがき





21/71ページ
スキ