12月24日の灯り
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俺は今、とんでもないものを目撃したんじゃ…
タケトは唾をごくりと飲み込んだ。
「あれー…キミ…
何故一緒に来れた?」
たった今気付いた風に、黒須はタケトにゆっくり目を向けて、だんだんと近づいてきた。
怖いのかなんなのか、タケトは口をきくことが出来ない。
「んー、サンタクロースの服装だから?
いや、そんなのごまんといるよね…
じゃあ何故…?
…あぁ…
そう…
キミにも…
キミのプレゼントを待っている、
小さな命の輝きがあるんだね?
へえぇ、
ふぅん、
若いのにねぇ。感心感心」
そう言い終わる頃には、鼻と鼻の先がくっつきそうな程に、黒須の顔が目の前にあった。
今まで気付かなかったけど、黒須の目は緑色にくすんだ色素で、まるでもみの木の葉っぱみたいだった。
「だけどね、キミが僕に逢うのはもっとずーっとずーっと先の話だから。
この記憶は消させてもらうよ。
ゴメンね?
古ーいしきたりってやつなんだよね(笑)」
黒須はニッコリ笑って、また、右手を高く掲げた。
おい待ってくれ。
俺知ってる。
昔、よくは思い出せないけど、オマエに逢ってる気がする。
似たような事があった気がする。
その指を鳴らしたら──
───ぱちん!!
「──────っあ??」
気付くとタケトは、片手にクリスマスケーキの箱を抱えて、もう片手を宙にさまよわせていた。
ザワザワザワと、この日特有の雑踏がタケトを包んで、タケトは訳が分からなかった。
…