レンズの向こう側

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「またもう、せーちゃんは。ねえ神保さん、ちょっと聞いてくれます?
 この眼鏡、せーちゃんに買って貰ったんですけど。これにしてから、せーちゃんのコバッキー呼びが止まんないんです。
 彼女としてどー思います、これ?」

「まあまあ。コバッキーも実は呼ばれて懐かしくて嬉しいっしょ?(笑)」

「ほらまた! そんな嬉しくもないしぃ」

 いつまでも女々しいノブキをいじるのが楽し過ぎ。

 一応フォローをすると、眼鏡は先月のクリスマスプレゼント。

 ノブキが眼鏡を新調したいと言ったので、それに付いていって…

 ノブキが決めたフレームのそばに、ノブキが入学当初に掛けていた茶淵眼鏡にそっくりのものが置いてあるのを見つけて、

「ノブキノブキ! これ掛けてみてよ! …わはーっ、お帰りコバッキー!」

「ちょっ、せーちゃん、ヤメテ!」

 懐かしい姿にすっかり盛り上がって、こっちにしなよと提案するも、ノブキは断固拒否。

「あたしと二人でいる時だけ用にじゃ…だめ?」

「……」

 ノブキ、あたしの類い稀な上目遣いにノックアウト(笑)(笑)

 結局は、その茶淵フレームとノブキが最初に決めたフレームの2本をお買い上げ。仕事用とプライベート用で使い分ける事となった。

 あたしのお願い通り、ノブキは二人きりの時にだけ茶淵眼鏡を掛けてくれて、その時だけあたしは調子に乗ってコバッキー呼びを復活させていた。

「ハッハッ。二人のノリも変わらないな。
 ありがとう、ここまで来てくれて。折角の休みだろうに、でも嬉しかったよ。
 これから旅行なんだろう? 二人の時間が減っちゃうから、もう行きな」

 追い出すようですまんな、と付け加えて、神さんはあたし達を玄関先まで送り出した。

 履いたブーツの底に違和感があって、隣のノブキの手を握りながら履き直しをしたら、

「あーっ、いちゃついてる~」

 後ろから見ていた神さんがお茶目に囃した、片手は口に、もう片手はあたし達を指差して(笑)

「神さんまたね! 今度は奥さんと娘ちゃんに会わせてね!」

「神保さんおじゃましました。次はお酒でも飲みながら話したいですね」

「おう。いつでもおいで。楽しみにしてるよ」

 神さんに見送られながら、あたし達は次の目的地へ車を走らせた。





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