レンズの向こう側

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「ハッハッハッ。まあ、ね。ここまで来れて、俺もやっと安心だよ」

 神さんは昔となんら変わらない笑い方をして、目を細めた。

「じゃあ、もう少ししたらこの家で皆で?」

「うん。3月になったらね。娘の修了式が終わったら」

 神さんは詳しく言いたがらなかったけど、実は異動の話になった時からすでに、神さんはそうするつもりで準備していたんだって。

 やっぱり家族を大事にする人だった。

 なのにあたしってば…あたしのあの告白は、本当に神さんには困っちゃうことだったな。今更だけど。

「それにしても、そうやって二人で並んでると、やっぱりあの頃を思い出すな。楽しかったなあ」

 自分の事よりあたし達の方が気になるみたい、神さんはずっとあたし達から視線を外さない(笑)

「でしょでしょ。ほらコバッキー、神さんの掴みはオッケーだったっしょ」

「まさかせーちゃん、この為にコレ買ってくれたんじゃないでしょーね!?」

 ノブキは口を尖らせてじとっと私を見た。茶淵の太い角眼鏡のブリッジをいじりながら。

 神さんはあっはっはと声を上げて、穏やかに言った。

「コバッキーか、その呼び名も懐かしいな」





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