ボーダーライン〈後編〉

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【今日、時間ある?】

 2月も半ばを過ぎた頃、槙村さんの久しぶりの短いメッセージを受け取った。

 やっと、ゆっくり話せる時間が取れたんだ。

 その時をあんなに待ちわびていた…はずなのに。

 返事を躊躇する…僕は槙村さんに軽蔑されてもおかしくない事を、沢山しでかしていた。

【ん? どーなの? 忙しい?】

 いつもならすぐに返事を出す僕を訝しんで、槙村さんは続けてメッセージを送ってきた。

【ごめんごめん、今起きたところ!
 今日は午後にひとコマあって、あとはバイト。その後でいいなら。
 ごはんでも食べに行く?】

 半分うそ、半分ほんとうの事を書いて、送信。

【あーそう。あたしは午前で終わるんだ。
 じゃあ一旦帰るから…バイト終わったら、南門の前のコンビニで待っててよ】

 槙村さんの返しに首をかしげる。

 いつもだったら、図書センターの事務室に居座ってお茶をすすってそうなのに。

【事務室で待っててくれてもいいよ?
 今日は神保さんいないけど(笑)】

 僕のメッセージの後しばらく間が空いて、これにも首をかしげた。

 てっきり、なんだー、神さんいないのー? とむくれたメッセージを送るかと思ったら。

【今日はいい。とにかくコンビニで。バイト終わったら連絡ちょうだい。じゃーね】

 それで槙村さんからのメッセージはおしまいだった。



 そんなわけで、槙村さんと久しぶりに逢う事になった僕。

 その日、講義を受けている間も、バイトの運搬をしている間も、せーちゃんにどこから話そうか、そればかりを考えていた。

 そもそも…せーちゃんの顔を見て話せるんだろうか?

 今の僕をせーちゃんが知ったら…

 僕は、せーちゃんの眼差しを…受け止める自信がなかった。





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