ボーダーライン〈後編〉

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 その年最後の通学とクリスマスイブが同じ日だった。

 その日は忘年会も兼ねてのサークルの飲み会、強制参加。

【俺達3年は、年が明けたら就活本格化だから。最後の羽目外し…もとい鋭気を養わせてくれ!】

 という松堂さんのリクエスト? に皆がノリノリだった。

 クリスマスなんだし、彼氏彼女がいる人なんかは来ないんじゃ? と思ったけれど、

 嫌でなければ連れてこい! というスタイル、これまたノリノリで、予想外に参加者が増幅した。

 なもんで、30に届きそうな程の大所帯、テーブルを3卓陣取って飲み会が始まった。

 僕と紡木さんはそれぞれ別のテーブルで、目も合わせなかった。

 僕が会場に向かう時に、前方に松堂さん率いる団体が歩いていて、松堂さんと紡木さんが肩を並べて歩いていた。

 時々見え隠れする紡木さんの横顔は、笑みに満ちていた。

 クリスマスだから? 松堂さんのお許しが出たのだろうか。

 お付き合いを公言していないとは思うけど、皆の前で松堂さんに堂々と話せる紡木さんは本当に嬉しそうだった。

 飲み会の席でも松堂さんの隣を離れず、ほんのり頬を染めながら、松堂さんにお酒を注いでいた。

 そんな光景を見に来たんじゃない。僕は僕で、二人はもうその場にいないものとして、他の仲間達と存分に飲み食いし語らった。



 始まりから1時間と少しした位に、

「ツムちゃん寮に送り届けてくるな(笑)」

「皆さんお先に失礼します。ちょっと早いけど、よいお年を(笑)」

 と言い残して二人は店を出ていった。

「あれぇ、ツムちゃん、寮母さんに言わなかったのかな?
 言えば、今日はクリスマスだから日付変わるギリギリまで門限延ばせるのに」

「部長は戻ってくるよね? え? 来ないの? ご自由に騒いでくれって…掲示板に…」

 ひどい喧騒の中でクリアに聞こえたこの言葉、僕の中でドロリと黒いものが流れた。



 飲み会は22時でお開きになって、二次会になだれ込みそうな勢いだったけれど、

「すみません、俺、明日早いんでお先です」

 と嘘を言ってその輪から外れた。

 駅に向かいながら、スマホに耳を宛てる。

 RRR…

 長い長いコール音の果てに、ガチャリ、

『…もしもし』

 紡木さんの遠慮がちな声が僕の耳に響いた。





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