ボーダーライン〈前編〉

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 条件の良さそうな求人先を何個か見つけて、赤ペンでマルを付けた。

 家に帰ったらまたじっくり考えよう、カバンに冊子を突っ込んでから、僕はカフェを出た。



 そうだ何か本を借りよう、電車の中は暇だから。

 学生証を認証機にかざして、図書館のゲートをくぐった。

 大学の図書館に入るのはこれが初めてで、何がどこにあるのかさっぱり分からない。

 ひとまず壁の大きな案内図を見る。だけど、僕の視線は別の所へ吸い込まれた。

 すぐ横の可動式掲示板に貼られた、大学構内の求人募集。

 教室の掃除、事務局の雑務、カフェのフロアスタッフ、色々あった。時給もなかなかいい。

 先ほどの赤マルを付けた求人広告は捨ててしまおうと思った。この中から選びたい。

 僕はカバンからスマホを出して、カメラモードにした。この求人掲示板にピントを合わせる。

「あの、ごめんなさい。館内は撮影禁止なんです」

「え」

 すぐ近くの貸出カウンターから声が飛んだ。

 そちらに顔を向けると、スタッフの女の子が申し訳なさそうに僕を見ていた。





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