ボーダーライン〈後編〉

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 (★)

「あ…えっ…ノブくん…?」

 囁くような紡木さんの声を拾って、そこから突然記憶が飛ぶ。

 なんでそんな事になったのか分からない。

 抱きしめた後、何がどうなって…

 気付いたら僕は、

 紡木さんの背中を窓ガラスに押し付けて、

 司書のユニフォームの赤いエプロンの結び目をシュルリと解いて床に落として、

 白と黒の太いボーダーラインのゆったりとしたトレーナーワンピースの裾から手を入れて、



「…なっちゃん…
 …なっちゃん…
 …なっちゃん…っ」



 うわ言のように呟きながら、あらゆる箇所を触っていた。

 この状況を隠すように、窓から差し込んでいた月明かりがすうっと消えて、僕達を闇が包んだ。

 紡木さんは…僕を突き飛ばさない…



「…もぉ…いい…
 …どうでも…いい…





 ……見たコト、忘れさせて……」




 僕の腰辺りを弱々しく掴みながら、掠れ声で言う。

 僕だって、キミとあのヒトのアレを忘れたい。

 そう強く思って、また記憶が飛ぶ──





 次に意識をハッキリさせたのは、自分のカラダの変化を感じたから。



「………っ!!
 なっ…ちゃん、
 ゴメン、俺…
 ……
 ……
 また、ゆっくり話そう? じゃあね!」



 僕と紡さんの間に空間を作り、乱れた服の紡木さんの返事も聞かないで、僕は走り出した。





 台車を押して裏口から図書館を飛び出し、図書センターの建屋に駆け込んで、すぐ近くのトイレの個室に籠って…



【…ゥウン…ッ、アァァ…
 ノブ、くぅん…イ…クゥ…】



 なっちゃんの潤んだ目。



 なっちゃんの濡れた声。



 なっちゃんの胸。



 なっちゃんのくびれ。



 なっちゃんの毛。



 なっちゃんの…アソコ。



 後から後から、記憶や感触が蘇る。



 全部全部、この手で触れたんだという恐ろしいぐらいの高揚感を纏って、





 ──僕は抜いた。





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