ボーダーライン〈後編〉

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 次に目を覚ましたのは、もうお昼に近い時刻だった。

 スマホを見ると、掲示板の更新通知が沢山入ってて、【四人とも無事でよかった!】【連絡遅過ぎ!】【ツムちゃん、足大丈夫?】【部長、レスキュー隊みたい!】等々。

 僕は【今起きました、ご心配お掛けして申し訳ありませんでした!】と前置きしてから、撮った写真達をアルバムページに転送した。

 その作業が終わって、もうひとつ未開封の通知があるのに気付いた。

 個人メッセージで、紡木さんから。



【ノブくん、何度もしつこいけど昨日は本当にありがとう。
 ノブくんが傍にいなかったらどうなってたか…
 話も聞いてくれて、励ましてくれたの、すごく嬉しかったです。
 下山した後、松堂さんに沢山叱られました。
 でもちゃんと仲直りできて、私の気持ちもスッキリしたので…安心してね。
 また、ノブくんに色々相談しちゃうかも。
 迷惑でなければ、宜しくお願いします】



 これを見た途端、昨日の場面がフラッシュバックされた。

 抱きすくめた紡木さんのやわらかさ。

 その時の紡木さんの息づかい。

 残酷なほどに生々しく…刻み込まれている。



【仲直り出来てよかった。
 もちろん、俺でよければいつでも聞くからね!
 そういえば昨日? 今日? すごい真夜中に書き込みしてたね(笑) 松堂さんもだけど(笑)】



 動悸が速くなるのをごまかしてそう返事をすると、



【あ、そうなの(笑)
 ヤバい掲示板に連絡入れてないって松堂さんが言ってて…私も慌てて書き込んじゃった。
 そういうノブくんも、すぐに返事くれてたよね(笑)】



 何気なく書いたであろう紡木さんのこのメッセージを見て、抱きたくない詮索の気持ちが沸いてしまった。

 もしかして…紡木さんと松堂さんは夜中ずっと一緒にいたの?

 それは…どういうイミか…

 気が…

 ……クルイソウダ。



【ずっと心配で眠れなかったよ!
 ってのはジョーダンで、たまたまあの時間に目が覚めたんだよ(笑)
 紡木さんも疲れてるでしょ? 今日はゆっくり休んでね! また大学で(`・ω・´ゞ】



 無理矢理会話を終わらせて、僕はスマホの画面を切って枕元に投げた。





 僕が引いたボーダーラインは



 校庭に引かれた石灰の線だったんだろうか



 自分で不意に踏んで



 滲んで掠れてぐちゃぐちゃだって事に



 この時は愚かにも



 まだ気付いてなかった





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【ボーダーライン】中間雑談・7





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