ボーダーライン〈後編〉
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予報通り、見事な秋晴れになった。
だけど、雨が降る度に冬に近づくのを感じるこの時期、しかも目的地は山、しっかり防寒対策をして家を出た。
夏の時と同じように最寄り駅で拾って貰った。出迎えてくれたのはやっぱり松堂さん。
今回の参加者は僕を含めて10名、男6女4。
5ー5で分かれるので、レンタカーは無しで、松堂さんと副部長が自分のセダン車を出してくれた。
「お前、途中運転してみるか? なら助手席に座ってくれ」
と言われたので、助手席に乗り込んだ。
後部座席を見て、挨拶をしながらドキンとした。
紡木さんがいたからだ。
「あっノブくん、おはよう!」
窓からの陽射しを受けて、紡木さんは目元の泣き袋を見せながら笑った。
やっぱり、綺麗。やっぱり、好き。
その思いが表に出てしまったのは、違和感を感じたからだ。
紡木さんと松堂さんの距離感。
座っている位置の問題かもしれない。松堂さんが運転席、その真後ろが紡木さん。
でも恋人同士なら、普通隣にいるもんじゃないのか? 運転をあてにしてるとはいえ、僕が助手席でいいんだろうか?
山へ到着する前に、みんなのお弁当を前もって注文したからと、あるお弁当屋さんに寄った。
取りに行く役を、僕と紡木さんがじゃんけんに負けてする事になった。
お会計を済ませて、お店の人がお弁当10個を袋に詰めている間、僕は気になった事を紡木さんに思いきって聞いてみた。
「紡木さん…
もしかして、松堂さんとケンカでもした?」
「えっ!?」
紡木さんがビックリして僕を見上げる。
「あ…ちがった? ならいいんだけど。
でも二人、あんまり喋ってないように見えたから…」
僕がそう言うと、紡木さんは困ったような顔をしてこう言った。
「あはは…
け…松堂さん、からかわれるの嫌だからサークルのみんなには内緒なって…秘密の方が燃えるしって…
ノブくんに私達の事話しちゃってるの、知らないの。
だから、ノブくんも知らないフリをして貰えると…助かる」
「そう…なんだ。ウン、わかった」
「ほんとごめんね…そんなだから、私も松堂さんに話しかけるのためらっちゃって…」
違和感の原因は分かったけれど、松堂さんの真意が全く見えなくてモヤモヤした。
みんなの前で堂々としたいだろう紡木さんの気持ちを、松堂さんが無視する意味が分からない。
紡木さんにこんな顔をさせるくらいなら、僕の前でいくらでもイチャイチャしてくれとさえ思った。
…