ボーダーライン〈後編〉
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紡木さんと松堂さんが付き合い始めた。
サークルの他のメンバーはこの事を…知らないようだった。
掲示板でのやりとりを見る限りはいつも通り、誰も冷やかす人はいなかったし、当の二人も私情を挟まず先輩後輩のままだった。
でも僕は現場を見ている…
自然とサークルから足が遠退いた。
週1の部室での集まりは元々行けてなかったけれど、月1の飲み会や近場の散策すら、何かしら理由を付けて顔を出さなかった。
紡木さんと松堂さんが並んでいるのを見たら、確実にあの時見た二人の秘め事がフラッシュバックする…
そう思ったから。そんなのは絶対に嫌だった。
あの夏の海以来、松堂さんにいい印象を持っていない僕だけど。
こんなに紡木さんが好きでたまらない僕だけど。
二人が恋人同士なら、これ以上近くに行ったらダメだし、紡木さんへの想いを閉じ込めてしまわないといけない…
僕はボーダーラインを引いた。
紡木さんに対して。
松堂さんに対して。
ここまでの結論を、本当は槙村さんに聞いて欲しかった。
事情をほぼ知っている、僕を応援してくれる、せーちゃん。
でも彼女は、10月に入ってから忙しそうだった。書店にいない事が多かったし、勤務後の一服の時も姿を見せなくなった。
神保さんに聞くと、少し時期が早いけど就職活動を始めたらしかった。
頑張っているんだな。応援するしかないじゃない。
コバッキー! と明るく呼びかけてくれる声を聞けなくて少し寂しかったが、また姿を見せてくれる時まで待とうと思った。
おかしな話だけど、僕達は連絡先を教え合っていなかった。
神保さんと槙村さんの間も、そうらしい。
あんなに親しいのに、本当に変な話。
そうこうする間に、季節はすっかり秋深くなった。
紡木さんと松堂さんが付き合い出して2ヶ月ほど経った頃、サークルの掲示板で新しい企画が持ち上がっていた。
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