ボーダーライン〈前編〉
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そこからまた幾日が経って、僕の誕生日がやってきた。8月23日。
紡木さんの誕生日の時は祝言フィーバーだったのに、この日は全く通知が来なかった。
が、個人メッセージで紡木さんから、
【お誕生日おめでとう!
ハタチ初日、楽しんでますか?
ノブくんにとって素敵な1年になりますように(о´∀`о)】
これだけで僕には十分だった。
行きの電車の中でニヤニヤ、もちろん口元を隠して。紡木さんに返事を打つ。
【ありがとう( ・∇・)
今日は普通にバイトして、その後飲みに連れてって貰います。
メガネケース、使わせて貰ってるよ( •̀∀•́ )b】
するとすぐに通知が来て、乾杯といってらっしゃいのスタンプと一緒に、【私も今、読んでる本にしおり使ってるよ】と送られた。
図書センターに着くと、開口一番に神保さんがこう切り出した。
「木庭くんスマン!
今日、どうしても外せない用事が入ってしまって…お昼になる前にここを出なくちゃならないんだ。
午後は引き継いでくれる社員が来るから、その後の作業の詳細は彼から聞いてくれ。
で、飲みにいく約束、ごめんな。
でもナシにするのはもったいないから、俺は行けないけど、せーちゃんとふたりで行っておいで」
「へっ」
「飲み代はホラ、これで賄って。美味いもん沢山食べな。
それから…ほい。誕生日おめでとう」
今日の多大な予定変更に目を丸くする僕の手に、神保さんは現金と綺麗にラッピングされた正方形の箱を乗せた。
「え、あ、ありがとうございますっ」
慌てて頭を下げる僕。
あーいいからいいから、楽しんでおいでと、忙しそうに神保さんは台車を押して行ってしまった。
頭を上げた時、なんかとんでもない事になってやしないか? と、一抹の不安がよぎった。
せーちゃんと飲みに行くの?
ふたりで?
女の子とふたりで飲むの初めてなんだけど?
ていうか、絶対せーちゃん、神保さんが来ないって知ったらギャースカ言うよね?
…