ボーダーライン〈前編〉
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皆が花火に夢中になっている間、トイレに立ったついでに荷物置き場に寄って、15cmほどの長さの、リボンのかかった箱をバッグから取り出した。
紡木さんへのプレゼント。どうしよう? いつ渡そう? 花火が終わり次第解散になる。車に乗る時にさりげなく渡そうか…
「ノブくん?」
「わぁっ?!」
後ろから声を掛けられてビックリした。
振り向くと、紡木さんが自分のバッグを抱えて、僕の反応に目を丸くしていた。
咄嗟にプレゼントを持つ手を背中に隠す。
「やだ、どうしてそんなに驚くの(笑)」
「そ、そりゃそうでしょ、ビックリするよ。あー、心臓止まるかと思った」
「ふふ…ねぇノブくん、例のアレ…今いい?」
「え、あ、今? うん、モチロン」
「皆がいる前じゃ恥ずかしいもんね…今の内に、こっそりとね?(笑)」
紡木さんの方から交換開始を申し出てくれた。
紡木さんのバッグの中から、エッフェル塔柄の茶色い包み紙の細長い箱が出てきた。
「ハイ…少し早いけど、お誕生日おめでとう」
仄暗い闇に紡木さんの笑顔が浮かぶ。
「ありがと…ね、開けていい?」
「ウン…あ、でも使わないかもしれないよ?」
「えぇ? 何だろ…」
テープを丁寧に剥がして、包装紙を取っ払った。
ボタンで止めるタイプの、レザー調の眼鏡ケースだった。
「わぁ…オシャレだね。ありがと。使わせて貰うね」
「ほんと? でもノブくん、コンタクトに変えるような事言ってたから、用ナシになるかなぁと思ったんだけど…」
あ。もしかしてあの時眼鏡ナシの僕を見てどもったのは、プレゼントが無駄になると思ったからかな。
「ううん、コンタクトはまぁ、まだ考えてないから」
僕の答えを聞いてほっと息をつく紡木さんに、今度は僕からの贈り物。
「じゃあ次は僕…改めて、誕生日おめでとう」
「ありがとう。私も、開けていい?」
「ウン…使って貰えたら、嬉しいけど」
リボンをほどいて箱のフタに手を掛ける紡木さんを、僕はドキドキしながら見つめた。
…