ボーダーライン〈前編〉
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空はすっかり闇に包まれ、星が瞬いていた。
バーベキューの食材をたらふく頂いて、ビールや缶チューハイも祝杯と勧められるまま飲んだ。
皆がいい感じに酔いが回った頃、僕が買ってきたケーキが出されて、
「あっ、あのケーキ買えたんだね! フルーツのも美味しそう。ノブくんありがとう」
紡木さんが近づいて顔を輝かせた。
「今日の人数15人だから、8カットずつにすれば、紡木さんどっちも食べれるよ(笑)」
「あっほんとだ! って、無理だよ、2コも入らないよ」
「またまた。女の子はデザートは別腹でしょ?」
「ひどーい(笑)」
そんな事を言っていたけど、ケーキを取り分けた松堂さんが「これツムちゃんな」と言って二種類のケーキを皿に乗せて渡したので、苦笑いしながら受け取っていた。
「ノブくん…これは私の意図ではないですからね」
「(笑)(笑)」
「もう…ほんとおなかいっぱいなんだから。
ノブくん、フルーツの方? じゃあこっち半分あげる」
「えっ」
紡木さんがフォークで白とピンクのケーキを半分に割って、僕の紙皿に乗せた。
「いいの? コレ、紡木さんのリクエストなのに。ひとつ全部食べないの?」
「だから、食べ切れないから…手伝って下さい、お願いします(笑)」
上目遣いされて、心臓が跳び跳ねた。「はい」と言うしかなかった。
「美味しいねぇ。オススメのもいいけど、私、ノブくんが選んだフルーツケーキの方が好きかも」
「そう…? よかった」
紡木さんから好きを貰って、舞い上がる。
このまま横にいられたらよかったが、花火に呼ばれて紡木さんは行ってしまった。
「ノブー? やらないの、花火」
そう声を掛けられても、僕はしばらくフワフワな気持ちでその場に立ち竦んで、それからやっと皆の所へ行った。
なんとなくふた手に分かれて花火をした。
僕は紡木さんのいる輪に入れなかった。
紡木さんの隣に松堂さんがいて、笑い合っているのを見たくなかった。
…