ボーダーライン〈前編〉
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その後も、僕は松堂さんのナンパまがいに付き合わされ、全く誰も引っ掛からないので、
「くそー、今日に限って何で全滅? オマエから女避けオーラ出てんの?」
と、ブツブツ言いながら1人で何処かへ行ってしまった。
やっと解放されて皆の所へ戻ると、
「ノブー、災難だったなぁ。毎年夏はいつもああよ。誰かしら犠牲になる(笑)」
と、松堂さんのナンパ癖を笑い飛ばして、僕に飲み物を渡してくれたり、ビーチバレーに誘ったりしてくれた。
そうして、陽がようやく西へ傾きかけた頃、
「おぅい、ツムちゃんが駅に着いたって連絡来たから、迎えに行ってくるなぁ」
松堂さんが戻ってきて、バッグから車のキーを取り出すとまた行ってしまった。
「あらぁ、結局成功しなかったのかな? でなきゃ、迎えに行くなんて言わないもんな(笑)」
先輩達がゲラゲラ笑うのを、僕は苦笑いをしながら聞いていた。
僕はもう、松堂さんに抱くイメージがガラリと変わってしまった。
「本日のもうひとりの主役、ご到着~」
「みなさん、お待たせしてすみません」
十数分して、松堂さんと紡木さんが並んで現れて、松堂さんにはにかみながら微笑む紡木さんの姿を見て、紡木さんに昼間の松堂さんの行動や言動を全てぶちまけたくなった。
その人に、そんな顔をしないで。
…