ボーダーライン〈前編〉

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 途中でお昼ごはんや夜のバーベキューの食材を買ったりして時間を食って、海に着いたのは正午を少し過ぎた頃だった。

 もう1台の車に乗っていたメンバー達と合流して、ビーチにパラソルやらレジャーシートやらを設置して、そこで買ってきたお昼ごはんを皆で食べた。

 それが粗方済むと、松堂さんが号令をかける。

「登山サークルの諸君、今日は遠路はるばるご苦労さん。
 この後は自由時間です。陽が落ちる頃にバーベキュー始めるつもりなんで、よろしく。
 主役のツムちゃんもその頃にはいるハズ…あ、もうひとり主役がいるの、忘れないでやって(笑)」

 松堂さんに背中をぐいっと押されて、よろめいて皆の前に出ると、よっ、十代最後の夏楽しめよ! と皆が囃し立てた。

 そう言われるまで気付いてなかった、そうだ、十代最後なんだ。



 遊泳やビーチバレーなんかで各々楽しんでいる一方で、僕はひとり松堂さんに呼ばれた。

「ノブさぁ、もっと自分活かせ。
 けっこうイイ線してると思うぞ? なのになんか、こう…
 眼鏡がマズイのか?」

 ブツブツ言ったかと思えば、突然眼鏡を引ったくる松堂さん。

「あっ」

「ほらやっぱりぃ。眼鏡取ったら実は、的な?
 無い方がいいぞ、ハタチ前の変身、恐れずしてみろ!」

「ちょ…返して下さいよ、あんまり見えないんですって」

「そうなのか? じゃあ次からはコンタクトな~」

 ゲラゲラ笑いながら、また僕の背中を押して、皆がいる方とは違う所へ連れていこうとする。

「あ…え…松堂さん? どこに行くんですか」

「どこって…
 ナ、ン、パ、かな?」

「はっ」

「そんなビックリすんなよ~(笑)
 もしかして、したことない? だろうな~、オマエそういうタイプに見えないもんな。
 まあそんな気構えないで、十代最後の思い出作りにさ。俺、付き合ってやるからさ。
 あ、あの子可愛くね?
 こんにちはぁ、どこから来たんですかぁ…」

 松堂さんが若い子に目を付けて声を掛けにいった。よくは聞こえないけど、やんわり断られているようだった。

「ほれ、ノブも声掛けろって」

 戻りざまに、ニヤニヤしながら松堂さんは言う。

 声掛けろったって。眼鏡外されたんじゃ、よく見えない。

 それでも、海辺というロケーション、十代最後の夏というシチュエーションで少しばかり気が大きくなっている僕は、目を細めて辺りを見回した。

 すると、女性二人組が視線を落としてキョロキョロとしている姿が目に入った。

 何か探し物?

「あ、あのぅ、どうかされたんですか」

 不純な気持ちはない、単純に助けてやりたいと言い聞かせて、僕は声を掛けた。





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