ボーダーライン〈前編〉

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 やはり浮かれた気持ちを持っててはダメなんだと、2年目、他のものには一切目もくれず勉強した。

 始めからそうすればいいのに、両親はずいぶん大きな独り言をよく漏らしていた。

「そんなに頑張って申し訳ないけど、一人暮らしは白紙よ。あんたが社会人になったら、また改めてお願いしなさい」

 ピシャリと放った母親に「あぁ」と低く呻くだけした。ウンウンと頷くだけの父親に腹を立てる気力も無かった。

 集中して勉強すればするほど、もちろん学力は上がったが、反比例して僕の心が猛スピードで枯れていった。

 滑り止めも、昨年と同じ志望大学も、合格を勝ち取った。僕は志望大学の入学を決めた。

 その頃には、本当、カラッカラに…渇いていた。

 人より遅いスタートを切った僕。

 何の為に、この大学に行こうとしてたんだっけ?

 …あぁ、そうそう、出版社に就職したくて少しでも有利になるように、本関係の勉強をしたいんだった。

 そんな事を、入学式の翌日の行きの電車の中で、ギュウギュウに押されながら思い出していた。

 そして今日は、講義や単位の説明を聞いた後、サークルの勧誘かなんかが始まるらしいや、

 なんて事もぼんやりと考えていた。





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