ボーダーライン〈前編〉
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大学が夏休みに入ると、当たり前だけどキャンパスは閑散として寂しかった。
僕は週3の割合でバイトに出たが、紡木さんに図書館で出迎えられなくて落胆したし、書店で槙村さんのかしましい声が聞こえないと、めちゃくちゃ静かだなと思ったりした。
神保さんとは毎回顔を合わせて、夏休み間のシフトは9:00~15:00で入ってたから、神保さんと連れ立って様々なお店でお昼ごはんを食べた。
「息子がいたら、こんな感じなのかなぁ(笑)」
と、神保さんは冗談混じりに言った。
神保さんはバツイチで、娘が1人、母親が引き取っていった、という事もこの時に聞いた。
サークルで海に行く3日前。
お昼は海水浴、夜は浜辺でバーベキュー、という詳細が出て、メンバーの皆が大盛り上がりの中。
♪~
1通の個人メッセージ。
──紡木さんからだった。
僕達は連絡先を交換していない。掲示板から僕のアイコンをタップしたのだろう。
彼女のメッセージを読む前から、僕の心臓は馬鹿みたいに暴れだした。
【紡木です。
こちらに突然ごめんね。
あのね、ノブくんにプレゼントしようって思ってるの。
同じ誕生月だしね?
リクエストとかあったら、聞かせてほしいな。
あ、あんまりお高いのはムリだけど(>_<)】
俺に誕生日プレゼント?
まさかとか、そんなわけないと思うより、真っ先に浮かれた。
【本当に?
じゃあ俺も、紡木さんにプレゼントしなきゃだね。
何かリクエストは?(σ・∀・)σ】
【あっ、そんなツモリで言ったワケでは( ºωº; )】
【まあまあ。プレゼント交換って事でいいんじゃない?(*^^*)
あっ、じゃあさ、、、あんまり気を遣うのもあれだし、1,000円位でお互い用意しようよ。
もちろん中身はヒミツで((・`艸・´))】
【うん、いいアイデア! じゃあそういうことで(笑)
3日、楽しみだなぁ(*´ω`*)】
【そうだね、俺も楽しみ】
文章からじゃ分からないかもだけど、ドキドキしながら紡木さんにメッセージをしていた。
相当にやけていたと思う。
紡木さんへのプレゼント、悩んだけどなんとかピンと来るものを見つけられた。
それが包装されるのを眺めながら、紡木さんの喜ぶ顔を…きっとあの泣き袋の笑顔を見せるだろう…浮かべながら、8月3日を指折り数えた。
…