ボーダーライン〈前編〉

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「あっノブくん! サークルの掲示板見た?」

 前期のテスト週間が終わって、返却される答案に一喜一憂していたある日、

 外で資料を乗せた台車を押していると、向こうから友達と一緒に歩いていた紡木さんに話しかけられた。

 図書館以外で逢えた嬉しさと、今日は図書館で逢えないのかなという暗い気持ちが、順番に入り交じった。

「ううん。バイト中はケータイいじらない事になってるから。
 何か新しいカキコミあった? そういやさっき、ポケットの中でバイブってた(笑)」

「あはは。この後沢山バイブるよ(笑)
 あのね、ほら来月私達、誕生日じゃない?
 それで、け…松堂さんがお祝い代わりにサークルで海に行こうって。
 今、皆が都合のいい日をカキコミしてる。
 ノブくんも後でゆっくり見てみてね」

「ん。わかった。
 あ…紡木さん…今日、司書の仕事は?」

「あっうん。今日はお休み。テストが終わったから、これから友達と打ち上げ(笑)
 じゃ、またね!」

 そう言って紡木さんは僕の肩をポンと触れて、友達の所に戻っていった。

 【誰?】と友達に聞かれて【サークルの友達で、木庭信暉くん】と律儀にフルネームを伝える紡木さんの背中を見送った。

 今日はもうこれで逢えないけど、このやりとりだけで十分だった。

 触れられた肩が、じわっと熱かった。





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